Interview |
18 08 02 Thu
対談:山中未久&土屋未来 アスリートとGライフスキル【後編】 |
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一年間、g-zoneに通いGライフスキルを身につけた山中さん。
2018年の復帰戦に向けて、どのように日々の生活やトレーニングを行っていったのでしょうか?
聞き手:鷲巣謙介
―山中さんは2018年の「全国女子相撲選抜ひめじ大会」で見事優勝し、カムバックを果たしたわけですが、それまでに行ったトレーニングや指導の中で特に重要であったものがあればお聞かせください。
土屋:Gライフスキルが重視しているものの中に、「むくみ」の予防があります。
アスリートの場合、身体にむくみが出るとどうしても感覚のズレが生じてしまいます。復帰戦の前には、「どうすればむくまないか」「むくみのケア」についてのアドバイスを行いました。
山中:特に復帰戦であるひめじ大会前は心身ともにだるさを感じていて、稽古でも思うように体が動かなく、心も不安定でした。しかし自分では何が原因なのか分からず、不安を抱えたままで稽古をしていた時期があります。
今回は土屋先生に「トレーニングで力をつけるよりも疲労や体調を改善することに重点を置いた方がよい」とアドバイスをいただき、さらにどこにむくみが出ているのかを診てもらったり、ケアをしていただいたことで体調管理ができました。何よりむくみや体調不良の原因が何であるのか、どうすれば対処できるのかを理解したことで、身体の調子だけでなく気持ちまで切り替えて試合に臨むことができたんです。
― 一年間Gライフスキルを実践したことで、稽古の質や取り組み方は変わりましたか?
山中:私の所属する立命館大学の相撲部は、当然私以外は全員学生です。
私も学生に混じって稽古をするのですが、やはり年齢的な身体の質や社会人としての立場からも、同じような稽古ではパフォーマンスが上がらないことを感じていました。g-zoneで教えていただいたトレーニングや考え方を活かすことで、自分が今何をすべきなのかが見えてきた気がします。
今では以前のようながむしゃらな稽古ではなく、自分の身体や立場にあったトレーニング方法を考え、選び取っていくことができるようになっています。
土屋:自分で自分の身体を知るというのは、Gライフスキルの基本ではあるのです。しかし実際には一流のアスリートでももちろん一般の方でも、「自分の身体を知る術」がないのが現状なのです。
アスリートが何気なくしているクセや悪い生活習慣は無意識に行っていることなのでなかなか気づくことはできませんし、そのためにパフォーマンスが低下しているという人も多いのです。私たちの役割は、こうした人たちに「自分の身体や心の弱さ」に気づくきっかけを与えることにあるんです。山中さんは、一年間稽古や試合から離れて、Gライフスキルを身につけていったことで、自身を改めて見つめ直す良いきっかけができたのだと思います。
−食など生活習慣の改善や意識的な改善の他にも、復帰戦に向けてg-zoneで独自のトレーニングを重ねたりしたのですか?
山中:土屋先生にご紹介いただいて、鶴竜関の専属トレーナーをしている八代さんという方のトレーニングを受けることができました。月に一回、熱海で行う二泊三日の合宿なんですが、これがハードなんです。
ジムでのトレーニングはもちろん、人を背負って階段を駆け登ったり、立木を斧で叩いたり、砂浜で走り込みを行ったり基礎体力を磨くための徹底したメニューをこなしていきました。この立場になると学生の時のように稽古で追い込まれたり、相撲の「かわいがり」を受けることもなくなってしまうので、この自分を徹底的に追い込んだこの経験は本当に刺激になりました。
土屋:アスリートのパフォーマンスを高めるためには、専属のトレーナーによる指導が効果的な場合もあります。g-zoneでは、相撲だけでなく、サッカー、野球など数多くの分野で外部のトレーナーさんとの協調も積極的に行っています。ライフスキルのプロである私たちと、競技技術のスペシャリストである専属のスポーツトレーナーが組むことで、アスリートのパフォーマンスを引き出すシナジーを生むことができるのです。
もちろん、こうした分野を超え、複数の組織でアスリートのサポートを行うことに否定的な声はありますが、私たちはそうは思いません。
なにより私たちトレーナーは裏方。アスリートが良い結果を出すためのできる限りのことをしてくのが使命なのです。
−2018年の「全国女子相撲選抜ひめじ大会」での取り組みの印象を教えていただけますか?
山中:試合が始まってからは不安を感じることはありませんでした。
一年間、土屋先生をはじめ多くの方のサポートを受けながら、他の選手がしていない努力をしっかりと重ねてこられたという自信があったんです。本当に、心も身体も一年前とは違うと実感していました。なにより相手をどうしたいというのではなく、一年間いろいろな課題を乗り越えてきた思いをぶつけ、自身に何ができようになったのか試そう、結果はその後について来るんだという気持ちが強かったんです。土俵際ギリギリの時も、八代さんのトレーニングで培った「なにくそ」という思いで踏みとどまる力が出ましたし、本当にみなさんには感謝しています。